第69章

山田澪はソファに座り、北村健が手にタオルを持って彼女の髪を拭いていた。

彼女は血の気のない青白い顔をしており、頭上の明かりが照らすと、まるで死人のように蒼白だった。

山田澪の目が虚ろで、身動き一つしない。北村健は彼女を一瞥した。

だが彼は何も言わず、髪を拭き続けた。

彼は北村家で何があったのかさえ尋ねなかった。それを察して聞かないのか、それとも彼女が北村家で何を経験するかなど全く気にしていないのか、わからない。

前回と同じように、彼は知っていても、このように黙っていた。

痛くないかと一言も聞かなかった。

そうだ、哑がどうして痛みを感じるだろうか?

北村健は髪を拭いた後、ドライ...

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